2015年2月19日木曜日

フルメタルカスタムIEMの自作に挑戦

!?


挑戦、というタイトルでいきなり完成した画像を出すのは如何なものか。
作ってみました。フルメタルカスタムIEM。


・動機

昨今の自作オーディオ界隈でじわじわと広がりつつあるのがカスタムIEM製作です。カスタムIEMとはなんぞや、みたいなのは皆さんご存じの通りでしょうから割愛します。
Twitterのフォロワーさんでも数人自作されている方がいました。そんな彼らの作例や製作中のツイートなどを見て興味を持ち、昨年のポタフェスでお会いして実物を拝見した際に、「君も作ってみなよ」なんて誘われたのが事の始まりです。
その時は、研究し出すと奥が見えない沼だろうけれどBA一発なら難しい事考えなくても頑張れば作れるんじゃないか、と薄らぼんやりと考えました。
 
しかし皆作ってる界隈に片足突っ込むのに、普通に作ったらなんか面白みがない。そう考えたあたりで方向性が少しズレ始めました。
どうせなら一石を投じるようなインパクトのあるカスタムIEMを作ろう、と。見た目でインパクト出すなら誰も試したことのないフルメタルシェルとかどうだろう、と。
 
気付けば完全にネタ路線で計画を進めていました。究極のネタIEMの製作を目指し、私は部品を注文し補聴器屋に駆け込むのでした。


・製作記

ここからはTwitterの投稿をベースに言葉を付け足すような形で書いていきます。

自分はカスタムIEMを購入したことがありません。いまいち惹かれる製品が少ないのと、惹かれたモノも同じ金額払うならユニバーサルで良いのあるよね、って考えてしまうのが購入に踏み込めない理由です。基本的にBAの音が好きになれなくて、そこに起因する問題でもあるのですが。



そんなわけで耳型を採るのも初めてでした。両耳にシリコンを充填された時の恐ろしいほどの静寂。非常に面白い体験でした。この経験ができるだけでもカスタムIEMを作る価値はあるってもんです(?)


採った耳型を加工します。加工の手引きとしては、自作から始まり、今ではくみたてlabとしてカスタムIEM製作をなさっている北杜うましさんの『自作IEMはうとぅー本』を多大に参考にしました。この場を借りてお礼申し上げます。
北杜うましさんのブログはこちら!→四畳半から


耳型加工ですが、勇気を入れてナイフを入れ込んでいくとなんとなく整えるべき形が見えてきます。成型に必要な箇所、不要な箇所の判別は感覚的にわかりました。


大まかな加工を終え、リューターで角を落としたらロウソクフォンデュです。耳型の表面にロウを付け、雌型に表面に耳型自体の凸凹を付けないようにするのが狙いです。
やり直しが効く部分なので何度か試しコツを掴んでいきました。が、後の処理ではもっと分厚くロウ付けした方が良かった事が発覚します。
 
シリコンに埋め、雌型を作ります。画像が無くて申し訳ない…。
 
 
ここまでで他の方の自作工程と異なる部分は殆どありません。強いて言うなら光硬化樹脂を使わない為に雌型が透明では無い事くらいでしょう。これからが本番です。
 
 
今回の製作では鋳造によってシェルを作ります。削り出しを期待した方はすみません。削り出しはいろいろ無理です。
では鋳造ならばどうやるのか?雌型からワックスでシェルを作ってロストワックス方式?…それも考えましたが、コストが嵩むのと今回は外注無しで作りたかったのでロストワックスは却下しました。
そんな回りくどい事なんてしてられません。雌型のシリコンに直接溶かした金属を流し込んで成型します。無茶苦茶に思うかもしれませんが、シリコンは耐熱性に優れた物質です。低い融点の金属の熱量ならば溶けることなく受け止めてくれるはず、と踏みました。
更に今回は音導管、ドライバ、ケーブルコネクタ、配線を予め雌型内に配置、これらを金属で埋め込むようにして成型することにしました。一括成型とでも言いましょうか、シェルというよりもソリッド的な概念です。
以前から目を付けていたとある合金を調達。シリコンや配線材の被覆の許容温度を鑑みて、これしかないというレベルで選び抜いた合金です。
試作でドライバを入れずに作ることにします。コンロで金属を溶かし、シリコンに注ぎ込む!

鋳込んだ直後の状態。金属光沢がふつくしい
予想通り、シリコンは金属の熱量にも無事耐え切ってくれました。
この光沢は冷え固まると共に引けも発生して残念なことになってしまいます…。



こんな感じに。

十分に冷えてからシリコンから取り出します。
わーお…
ここにきて初の想定外の自体です。表面に無数の凸凹が見られます。気泡が抜けてくれなかったのか、冷え固まる過程での欠陥か…詳しい原因はわかりませんが、鋳込み時の温度を変えるなどして何度か試してみるも改善は見込めませんでした。
ポタ研にはなんとしても間に合わせかったため、この欠陥は次回の課題として見送ることにしました。
 
その後、音導管と配線をつないだドライバ、ケーブルコネクタを雌型内にぶちこみ、本番の製作です。一番緊張した瞬間でした。下手したらドライバが一瞬でお釈迦になりますから。w
冷え固まってから出音を確認します。結果は予想に反して(?)大成功。BAドライバ1発のチャキチャキした貧相な音が鳴りました。音質は二の次なんでこれでいいのです!
鳴ったぞい!
案の定引けは発生しているのでその分を削り、フェイスプレート(便宜上そう呼ぶことにします)を平らに。ついでに面取りや粗が目立つところを削って…

完成です!!
圧倒的質量…!圧倒的金属…!
世界最重量イヤホンの完成ですw


・使用感

一応書きますがお察しのとおりです。絶望的ですw
そもそもカスタムIEMの最大の利点である遮音性が市販イヤホンレベルです。重さの影響で耳道とIEMのカナル部の間に隙間が開いているんですね。普通のカスタムを持っていない自分でもこれがカスタム本来の遮音性じゃないことはわかりましたw
ただ重さは体感上は思ったより気になりません。首を横にしてもヘリクス部でのロックが効いて落ちませんし、そこら辺はカスタムらしくできたかなーと。
ちなみに鉛とか入ってるのでアレルギー的にも絶望的です。あくまでネタとしてみてやってくださいw
後日ラッカーやUV樹脂コートで対策する予定。一応、ね
 
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いろいろと目に余る部分はありますが、音が鳴るフルメタルIEMが製作できただけで今回は大成功とさせてください。ちなみに多分国内初とか言いながら、fitearの須山さんにやられちゃってました。
須山さんのチタンシェルのMH334。美しい…。
当たり前ですが敵いませんねw
次回(あるのか?)の課題としては、表面の凸凹の除去(雌型を厚めに作って鋳込み後に削り取り等)、2way,2ドライバ以上の挑戦や音導管の改良(今回は音導管は真っ直ぐに限られていました)などでしょうか。
作っていて楽しかったですし、いろんな方に笑って頂けたのでひとまずは満足です。w
それではまた。

2 件のコメント:

  1. カスタムIEMを自作しようとして拝見しました。
    金属表面の凹凸は、雌型シリコンの温度と溶融金属の温度差により
    鋳造時の急速な冷えに伴うものと思われます。
    鋳造の際に雌型を金属の温度と同程度まで予備加熱することで改善が
    期待されます。

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    1. 閲覧、コメントありがとうございます。

      仰るとおり、雌型との温度差や、鋳込み時に発生するガスが雌型の材質上逃げない事などが重なり、この様な状態になったものと考えました。

      しかしながら雌型に事前にドライバを植え付けてから鋳込んでいるため、雌型を加熱するとドライバ破損のリスクを伴ってしまい難しいところです。
      二個目の製作ではビニールに包んで沸騰したお湯の中に入れて加熱し、多少温度差を縮めましたが、凹凸は若干残りました。
      雌型の材質と製法自体に限界があるようです…。

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